後編

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後編

 城内は慌ただしかった。 『陛下、勇者たちがそろそろ来ます』 「え、もう来るの?」  目の前では、バタバタと漆黒の装束を着たマナ様。 「……やっぱり、止めません?」 「何言ってるの? 勇者といえば、魔王による世界の危機から人類を救う救世主! ましてや私は魔王! 一生に一度は言ってみたい台詞ってあるでしょ? せっかくの機会だし、言ってみたいの。私は」  今更だが、本当に今更だが、この人は形から入るタイプだ。今更だが。 「だから、黒装束なんですね」 「何か悪役っぽくない?」  そんなことをしていれば、 『謁見の間まで、もうすぐです』  と声が聞こえてきた。  そして、謁見の間の扉が破壊される。 「覚悟しろ、魔王! って……!」 「フハハハハ! 良く来たな、勇者! だが、こっちとてそう簡単には()られんぞ!」  目を見開き、驚愕に染まる勇者を余所に、勇者の仲間がそれぞれ構えます。  まあ、マナ様は勇者について、ほぼ一方的に知ってましたからね。そんなに驚いたりはしません。 「……」 「……」 「……」 「……」  だが、構えただけで勇者側から何の反応も無いためか、恥ずかしさから、ギギギとこちらを向くマナ様。     
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