前編

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 それを聞いたであろう彼女の返答は、といえば―― 「うわー。来ちゃったよ、異世界転移。しかも、魔王サイドとか。え、私勇者に殺されて死ぬの? うーん……」  と、何とも言えない返事であり、ついにはそのまま考え込む。 「あ、あの……?」 「『魔王』って言うからには、やっぱり王様なんですよね?」 「ええ、一国の王です。魔族の、ですが」  そこからまた返事はなく、何かを考え込む。 「貴方は、どんな立ち位置の人?」 「一応、魔王様の補佐をやらせてもらっています」 「補佐、ね。それじゃ……っと、名前は?」  漆黒の瞳がこちらに向けられる。 「私、ですか?」 「貴方以外に誰が居るんですか?」  そりゃそうだ。自分の名前以外で聞くとすれば、目の前にいる相手以外に居るはずもない。 「私は、リーンハルトと申します」 「リーンハルト、ね。ハルトさんで良いですか?」 「呼び捨てで構いませんよ。貴女は王なのですから」 「でも、私よりは年上ですよね。ハルトさん(・・・・・)」  あ、問答無用で呼び方は決定なんですね。 「私は、不知火(しらぬい)真南(まな)と言います。真南が名前です。これから、よろしくお願いしますね。ハルトさん」  にっこりと、彼女は笑みを浮かべた。    ☆★☆        
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