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とりあえず、あの場に居るわけにもいかないので、場所を執務室へと移す。
「おぉ、見事なまでに書類の山だね。リーンハルトさん」
略さずに呼ばれた。
「まお……マナ様の前任者が、書類仕事をほとんどやらなかった方だったので……」
「ふーん。とりあえず、散らばってるやつを拾って、優先順位が高い方からやっていこうか」
「来て早々、申し訳ありません……」
気にしないで、と返しながら、拾い始めるマナ様。
これは、執務室までの移動中に役職名じゃなく、名前で呼べと何度も言われたからだ。
公的ならともかく、二人っきりの時に『魔王様』なんて呼ぼうものなら、睨まれかねない。
「ハルトさん、ハルトさん」
「何でしょうか?」
「他の人たちも、書類仕事はしているの?」
「ええ。貴女だけではなく、歴代の魔王様お一人に任せていては、居なくなったときに混乱しかねませんからね」
なるほどね、とマナ様が頷かれる。
「この水晶は?」
「ああ、それですか? 勇者の行動を見ることが出来る水晶ですね。この世界では、勇者が召喚されれば、魔王が召喚されますから」
マナ様の手が止まり、こちらに振り返る。
「リーンハルトさん」
「はい」
「この国の成り立ちから今までを知ることの出来る本って、ありますか?」
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