王の対面・前編(天霧北都視点)

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「あの魔王は、前にも勇者たちに話したと言っていました。なのに、そのことを我々は知らなかった。ヴィドルを見てると、彼のような王族に消されたのが妥当だと思えてきますね」 「リリアナまで……」  神官のリリアナが呟く。 「でも、結局魔王は私たちに説明だけして、攻撃も何もしてこなかった。他の魔族も、好戦的な奴ら以外は何もしてこなかった」  リリアナが魔王の元へと辿り着くまでの経緯を思い出したのか、そう話す。 「まあ、どちらにせよ伝えないと駄目だよね。――魔王が陛下に会いたがってる、と」  そう、今回の謁見は、それに尽きる。  いくら異母妹からの頼みとはいえ、普通はそんなこと陛下にさせるわけにはいかないし、対面して話すなんて望みが通るはずもない。 『大丈夫だよ。王同士の話し合いだし。だから、約束を取り付けてきてくれないかな?』  おにーちゃん、と最後に付け加えられてしまえば、普段の彼女のギャップもそうだが、何とも不安に駆られてしまう。 「よし、行くか」  軽く深呼吸をし、ある程度、気持ちを落ち着ければ、扉の両隣を守る騎士たちに促され、謁見の間へと入っていくのだった。    ☆★☆    「――なるほど、そう来たか」  俺たちの報告を聞き、国王はただその一言だけを言って、目を伏せる。 「父上! 今すぐ対策を!! これは魔王を退治できる好機なのです! 何もしない手はありません!!」     
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