13人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの魔王は、前にも勇者たちに話したと言っていました。なのに、そのことを我々は知らなかった。ヴィドルを見てると、彼のような王族に消されたのが妥当だと思えてきますね」
「リリアナまで……」
神官のリリアナが呟く。
「でも、結局魔王は私たちに説明だけして、攻撃も何もしてこなかった。他の魔族も、好戦的な奴ら以外は何もしてこなかった」
リリアナが魔王の元へと辿り着くまでの経緯を思い出したのか、そう話す。
「まあ、どちらにせよ伝えないと駄目だよね。――魔王が陛下に会いたがってる、と」
そう、今回の謁見は、それに尽きる。
いくら異母妹からの頼みとはいえ、普通はそんなこと陛下にさせるわけにはいかないし、対面して話すなんて望みが通るはずもない。
『大丈夫だよ。王同士の話し合いだし。だから、約束を取り付けてきてくれないかな?』
おにーちゃん、と最後に付け加えられてしまえば、普段の彼女のギャップもそうだが、何とも不安に駆られてしまう。
「よし、行くか」
軽く深呼吸をし、ある程度、気持ちを落ち着ければ、扉の両隣を守る騎士たちに促され、謁見の間へと入っていくのだった。
☆★☆
「――なるほど、そう来たか」
俺たちの報告を聞き、国王はただその一言だけを言って、目を伏せる。
「父上! 今すぐ対策を!! これは魔王を退治できる好機なのです! 何もしない手はありません!!」
最初のコメントを投稿しよう!