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あの城で会ったときと何一つ変わらない、黒系統一色の装束。
着地と同時に、ふわりと彼女の長い髪が揺れる。
「うん、割と上手くいって良かった」
吐き気もなければ、服もそんなに崩れてないし、と今自分が敵陣に来たというのに、それを感じてないような言い回しである。
だが、この場はそうはいかない。
俺たちの話を聞いていたとはいえ、いきなりのことに騎士たちが動けるはずもなく、彼らが動こうとするよりも先に陛下がその口を開く。
「君が……」
「お初に御目にかかります、国王陛下。当代魔王、不知火真南と申します。此度は、このような場を設けていただき、感謝いたします」
そう告げながら、真南は綺麗に頭を下げると、にっこりと微笑んだ。
ほとんど一方的だけどな、という突っ込みをしたいところではあるが、当たり前というべきか、何やらピリピリしているので止めておく。
「う、うむ。わざわざ出向いてもらって済まないな」
「いえ、お気になさらず。むしろ、この方が貴方がたの心情を察するに、不意打ちなどを気にする必要はほとんど無いので、楽なのではありませんか?」
「だが……いや、そなたは違うであろう。そなたから見れば、我らは敵なのだから」
そこが、俺も一番気掛かりだった。
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