王の対面・前編(天霧北都視点)

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 しかも、従者一人も無しとか、馬鹿なのかと問い詰めたいぐらいだ。 「……そうですね。それなりの準備は出来たでしょうし、時間は与えたつもりです」  この場が一気に殺気立つ。  俺たち以外(ヴィドルは除く)の殺気はすべて、真南へと向いている。 「貴様――」 「でも、少しばかり言い方は悪くなりますが、一言言わせてもらいますとですね。貴方がたは少々、私のことを見くびりすぎてはいませんかね? その程度で、私が簡単に殺られるとでもお思いで?」  ヴィドルが口を挟もうとするが、させないとばかりの彼女のその一言で、その場を支配していた殺気という気が、一瞬にして恐怖心へと変わる。 「私とて『魔王』という地位を任された身。ですが、貴方も王であるのなら、分かるのではないのですか? その座に就いた者としての地位や名誉だけではない、責務を全うしなくてはならないことを」  ――ああ、彼女は。  俺の知る『不知火真南』という少女は、もう一国の王なんだな、と思う。 「私はこれでも一国の『王』なので、貴方と対等な者として扱ってもらわなければ困ります。私は貴方の部下とかではないのだから」 「っ、」  何を(もっ)て、そう判断したのかは分からないが、馬鹿にされてイラついているのだけは分かる。     
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