前編

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「ご自身で言っていて分からないのですか? 勇者が召喚され、彼女が魔王として喚ばれたんですよ」  それを聞いて、彼が顔を歪める。 「性懲りもなく、か?」 「ええ」 「あの時の奴らに教えたのに、か?」 「消されたんでしょうね。都合の悪いことは、どこも隠そうとしますから」  ああ、本当に可哀想だ。  今までの魔王様たちも、そして、マナ様も。  真実を知ったら、彼女はどうするんだろうか?    ☆★☆     マナ様が図書室に(こも)られて、四日目。 「マナ様、お食事を……」  食事を持ってきてみれば、倒れていた。 「マナ様ぁぁぁぁ!?」 「あ、ああ、ハルトさん……」  騒ぐ私に、マナ様が青白くも見えない顔を向けてくる。 「何日目に、なりましたか?」 「四日目です」 「四日。そう、四日ね……」  そんな彼女の側には、見終わったのだろう本が積み上げてあった。 「……明日で、多分、終わると思うんで」 「明日、ですか?」  あれだけ関連書籍があったのに、その大半を四日で読み終えるとは―― 「マナ様」 「何ですか?」 「まずは、お食事をしてください」  ちゃんと食べているはずなのに、痩せ細って見えるのは気のせいか。 「……食べれますか?」 「大丈夫です。……多分」  不安だ。 「食べさせましょうか」 「却下。拒否します」     
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