前編

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 そのまま一人で食べ始めるマナ様に、自分も食事を済ませに行く。 「それで、どうだったわけよ?」 「どうって、何がですか?」  先日、騒がしくしながら執務室にやってきた人――クロードさんに目を向ける。 「魔王陛下だよ。他の幹部連中が、図書室に行こうかどうか話してるぞ」 「そうですか。見たかった本は、明日には全て読み終わるそうです。挨拶もその後になるでしょうね」  クロードさんが顔を顰める。 「食事もきちんとなさっているので、彼女については大丈夫だと思いますよ」 「いや、そうじゃなくて」  彼が「あー」とか「うー」とか唸りながら、頭をがしがしと掻く。 「貴方が何を言いたいのか、何となく分かりますが、大丈夫だと思いますよ」  そして、マナ様は仰った通り、図書室に(こも)って五日目に出てきました。 「この世界は残酷だね」 「どうしました?」  欠伸混じりに言われた言葉に、首を傾げる。 「ハルトさん。この水晶、どう使うのかを教えてもらえますか」 「構いませんよ」  水晶の仕組みは簡単で、見たいものをイメージすれば映し出される。 「『今代の勇者の様子』を」  そして、映し出された人物に、マナ様の表情が変わる。  悲しそうな、残念そうな、そんな感じの表情だった。     
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