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そのまま一人で食べ始めるマナ様に、自分も食事を済ませに行く。
「それで、どうだったわけよ?」
「どうって、何がですか?」
先日、騒がしくしながら執務室にやってきた人――クロードさんに目を向ける。
「魔王陛下だよ。他の幹部連中が、図書室に行こうかどうか話してるぞ」
「そうですか。見たかった本は、明日には全て読み終わるそうです。挨拶もその後になるでしょうね」
クロードさんが顔を顰める。
「食事もきちんとなさっているので、彼女については大丈夫だと思いますよ」
「いや、そうじゃなくて」
彼が「あー」とか「うー」とか唸りながら、頭をがしがしと掻く。
「貴方が何を言いたいのか、何となく分かりますが、大丈夫だと思いますよ」
そして、マナ様は仰った通り、図書室に籠って五日目に出てきました。
「この世界は残酷だね」
「どうしました?」
欠伸混じりに言われた言葉に、首を傾げる。
「ハルトさん。この水晶、どう使うのかを教えてもらえますか」
「構いませんよ」
水晶の仕組みは簡単で、見たいものをイメージすれば映し出される。
「『今代の勇者の様子』を」
そして、映し出された人物に、マナ様の表情が変わる。
悲しそうな、残念そうな、そんな感じの表情だった。
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