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前編
「新しい、魔王……?」
周囲をぼんやり見つめていた少女に、思わずそう呟いてしまった。
もし、彼女が新たなる魔王であるのなら、それは新たなる勇者が現れたという事だ。
――また、人間たちは過ちを繰り返すのか。
せっかく、命を賭けて伝えた人も居るというのに、彼彼女たちの命が無駄にされてしまった。
そんなことを考えていたものだから、呼び掛けられて、すぐには反応できなかった。
「……あの、貴方はこの城の人でしょうか?」
「っ、はい。そうですが……」
「勝手に入り込んでしまって、すみません。どういうわけか、気付いたらこの場所に居たものですから」
今の所、責めるつもりは無いのだが、「すぐに出て行きますから」という言葉に、「それは駄目だ!」と咄嗟に返してしまい、きょとんとする彼女と目が合う。
「申し訳ありませんが、それは出来ません」
「あ、やっぱり不法侵入で訴えられるんですか。参ったなぁ……」
「訴えませんよ」
話を逸らそうとしていることは分かっているが、いつまでもそうして貰っているわけにも行かない。
少女の前で片膝を着いて、告げる。
「お待ちしておりました。魔王様」
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