3浪 180805

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3浪 180805

 私が最初に大学を受験したのは、3年前の冬である。  暖冬と言われていたその年の冬、受験の前日から大寒波が襲来した。  横殴りの雪が家のドアと窓を塞ぎ、電車は線路上で先に進めなくなった。  私に、また不幸がやってきた。  受験の日の朝、窓を叩く雪の音を聞きながら、私は自分のその不幸を呪った。  行くぞ芳美。  カッパに長靴にカンジキ。  完全防備の小柄な東北人が、玄関に仁王立ちになっていた。  私のばあちゃん。  亡くなった父母の代わりに、私と一緒に住んでくれているばあちゃん。  あんた受験だろ。行かねばな。  がっしと私の腕をつかみ、ばあちゃんは歩き出した。  ばあちゃんのお陰で、私は大雪を乗り越えた。  と、そこまではよかった。  だがしかし。  私の不幸はそれだけでは済まなかったのである。  ようやく辿り着いた受験会場で、私は自分の鞄の中に受験票が無い事に気付くのだ。
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