第10話 小人の新しい王様

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 愛する彼の子を。動画の中でまたトニー教祖がそう言った。何回も繰り返し再生される宣伝用の動画。動画の中のその言葉が、私の心に刺さる。愛する彼の子。愛する彼。角さん。角照英。私は結局、角さんに言い出せなかった。あなたの子が欲しいと。あなたの子種を持ち込ませてください、と。もし私がそう言ったら、それを口に出していたら、角さんはいいよって言ってくれたと思う。子種を提供するよ、って。真面目な顔をして、彼は言ってくれたんだと思う。角さんはそういう人だ。でも私は言わなかった。言えなかったんじゃない。敢えて言わなかったんだ。角さんには既に家族があったし、私がそれを望んでいる訳でもない。私は子供が欲しい。そしてそれが角さんの役に立つ。だったらそれで一挙両得だ。それでいい。私はそう思った。子種の持ち込みはいらない。カルト・アースが授けてくれる。この私の子宮に、地球の神の子を。それでいい。充分だ。
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