第10話 小人の新しい王様

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 見渡す限りの平地に、孤高にそそり立つ仏像。  カルト・アース総本山。  巨大な建造物。全高百二十メートル。  通称「仏」。  それはあまりにも大きかったので、ドローンで近づいていくと胸から顔にかけて見上げるかんじになった。  「お前は一昨日、どこから入ったんだ。見えるか?」  隣で角さんが聞いてきた。  「見えます。あそこ。仏の正面の入り口です」  「入り口から入って、その下に地下室があるのか」  「はい。入ると長いエスカレーターがあって、それで地下まで降りました」  「そうか。この下にノーマルタイプの地下室があるって訳だな。そこに榑松万太郎を隠してるのか。榑松の生体反応チップはここ二年半発信が途絶えている。それをもって抑止が成功したと小人化推進部は判断している。だけど榑松をこの地下へ隠しているとしたらどうだ。生体反応チップの発信は届かないし、抑止装置の電波も届かない。榑松は何年でもこの地下で生きていられるだろう。そして榑松から採取したノーマルタイプの精子を、幻覚剤で意識を失わせた信者の女たちに仕込むのだ。結局こいつらがやってるこたぁ政府が指定病院でやってる妊娠補助とおんなじだ。科学技術もへったくれも無い。愛する男の子供を受胎するも何も無い。幻想だ。榑松の精子を受胎して、榑松の子供が生まれるだけだ。治外法権を笠に着て信者の信心をコントロールして、奴らはこの先、世界を牛耳ろうとしてるんだ。なおかつ、奴らはこれを大金取ってやっている。大儲けじゃねぇか」  ビビビビビ。  警告音が鳴った。ドローンのアラームだ。角さんが画面を確認する。画面は下を指している。下を見ると、何か上昇してくるのが見える。ドローンが二機。ビビビビビ。更に警告音が鳴る。上がって来たドローンが警告を発しているのか。  「なんだこいつら。こっちは内務省だぞ。小人化推進部だぞ」  言いながら角さんがコンソール画面に何やら打ち込んでいる。警告してきたドローンに対してこちらの所属を示しているのか。ビビビビビ。また警告。  「なにぃ」  角さんが操縦桿を握ってドローンの自動操縦を解く。そうしている間に上がって来た二機のドローンは更に急上昇し、上手を取られる。ビビビビビ。また警告。  「こいつらどういうつもりだ。わかってやってんのかっ」  角さんが操縦桿を押し倒してドローンを急降下させ、反転して仏から離れる。押し戻された格好だ。相手は無人なのか。これはカルト・アースの警備用ドローンなのか。  「馬鹿野郎。覚えてやがれ」  引き返す操作をしながら角さんは激昂した。こんなに怒った角さんを、私は初めて見た。
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