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神試合 180812
ぱちっ。
外列に黒が打ち込まれた。
黒、黒、黒、黒。
外列にあった白が次々と黒に入れ替わってゆく。
圧倒的に黒優勢。どや顔の黒。
しかしその直後。キラッ。白の目が光った。
ばちっ。
更にその外側、最外側の角に、白が打ち込まれる。
白、白、白、白、白。
黒が白に反転してゆく。大逆転だ。
ふふふふ、と白が口の端を釣り上げて笑う。
角を制す者は勝負を制す。この試合、もらったな。
つまんない。テレビを見ていた弟が言った。
なんかさあ、去年よりレベル落ちてね?
確かに。私は弟ほど真剣にテレビを見ていた訳ではないが、なんか画面から出てくる雰囲気で、弟が言う気配を感じ取っていた。
オリンポス神の勝ち。今年もオリンポス神の優勝。
なんかさあ、と、弟は続ける。これってさあ、やらせじゃね?
小学生でもわかるのか、と私は思った。神々の真剣勝負。そろそろオセロじゃなくて、他の勝負にした方がいいかもね?と、私は弟に言ってみる。時間がもったいないので、ゲームの手は休めない。
うん、僕もそう思う、と、弟も言う。こんなのでさあ、神々の優劣を決めてさあ、一番になった神が人間を支配するんでしょう? なんていうか、やってられないんだけど。
私もそう思う。やってられない。神試合。こんなの見せる必要はないし、見せられる必要もない。神に対する失望感が増すだけだ。
勝った。勝ちました。と、アナウンサーが叫んだ。オリンポス神勝ちました。オリンポス神強い。強い。強い。3年連続優勝です。向かうところ敵なし。これで来年度の支配権が決定しました。誰も文句なしでしょう。地球上の誰も文句はない。そうです。そうですとも。文句なしの結果です。結果を出す男オリンポス神。彼こそ世界最強の神です。
人類平等。世界平和。オリンポス神優勝の文字と共に、その二つの文字が躍った。
弟がテレビを消した。グッジョブ。私は親指を突き出して、弟に伝えた。
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