2.チャンス

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「ごめん。会社の人に秘密にしてるって知らなくて。 あのさ、私ら同じ施設の出身で、ほら、親がいなかったり一緒には暮らせないとかの・・・で、秋葉は小学校のときに養子としてもらわれていったんだけど、うん、とにかくその施設で一緒だったんだよ。」 純は話すうちに吹っ切れたようにまっすぐこちらを見ているが、 秋葉は目線を下げたままだ。 「そうなんだ。じゃぁ、家族でもあり、幼馴染でもあり、って感じなんだね。」 さらっとそんな言葉が出た。秋葉がすっと目線を上げる。 「そう!ほんっと、そんな感じ。家族っちゃぁ家族なんだけど、それよかほんとに、そうだね、幼馴染ってイメージが強いかな。」 明るく返す女に対して、秋葉は淡々と返してきた。 「あの、申し訳ないんですが、会社では内緒にしてもらってもいいですか?」 「言わないよ。宮川さんが嫌なら。」 「すみません、成瀬さんにも」 結構仲良いってバレてんな。 「言わないって。」 眉間にシワが寄ったのに気付いたのか、すみません、と小さくつぶやく。 あ、ちょっと今のまずかったかな。 「分かるよ、言いたくない気持ち。俺も母親、シングルだから。それだけで色眼鏡で見てくるやつ、多いだろ」 フォローする気持ちで返すと、秋葉の顔もふっと安心した表情に戻り、 純がテンション高くこう言ってきた。 「そーそー!イケメンさん、分かってくれてんね。  ね、秋葉。付き合ってみたら?」 「「え!?」」 二人の声がハモる。 こいつ、「気になってた」あたり、聞いてたな。 急激に恥ずかしくなる。 「やー、嫌がってんのかなって心配にもなって声かけてみたけど、いい男っぽいし、私らのこと受け入れたのも早いし。結構懐深いタイプかもよ。」 今の俺には最高に嬉しい言葉を言ってくれる。 「い、やでも、私今あんまりそういう気持ち無くて・・・」 断り方向の秋葉に対し、純は粘る。 「あんたそんなことばっかり言ってたら、いつまで経ってもおじさんおばさんが安心出来ないって。ね、イケメンさん、気になってんなら1回、付き合ってやってよ。」 机を挟んで前のめりになってくる彼女に、苦笑しながらイケメンさんはやめて、と言って名乗る。 「松原さんね~!あたしは鈴木純!この通りで美容師やってんの!」 純は元気に名乗った。その時。 「ちょっと待って純ちゃん!終電!!」 「あ!!!」 二人とも終電を逃してしまったようだ。
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