6.絶望

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はぁ、とため息をついたのは、喫煙所で隣に立っていた奴にも聞かれてしまったようだ。 「おいおい、何で幸せいっぱいの奴が、そんなため息?」 立っていたのは成瀬だった。 「おぉ・・・成瀬か」 幸せいっぱいじゃねぇよ、とつぶやくと、 え?ちょ、どういうこと、と成瀬も焦ったようだった。 口を開きかけたが、成瀬も外出時間が迫っていたようで、 今日!あの店でな!と、言い捨てて去っていった。 バタバタと去っていく成瀬の背中を見ながら考える。 一人で家にいても、思い出してしまうだけ。 誰かといた方がマシかもしれない。 「お疲れ」 「あぁ。」 カチン、とグラスを合わせる。いつもの居酒屋。 ここで純に聞かれたんだよな、とまた気持ちが暗くなる。 俺の顔を心配そうに見たあと、成瀬が優しい声で聞く。 「で、そんななってるのは何で?」 「自分から告白したんだ。ゲームのこと」 成瀬の目が丸くなる。 「なんでだよ!お前、変なとこ真面目だよなぁ、言わなくてもいいことを・・・」 と呆れたようにタバコをふかす。 そんな成瀬に、純という秋葉の友人のこと、その純に会話を偶然聞かれていたことを説明する。 「まじか。運、悪いな・・・」 そう言って哀れみの目を向けてくる成瀬だが、俺は運が悪いとは思っていなかった。 むしろ、今まで人を傷つけておいて、こんな気持ちにさせておいて、のうのうと過ごしていたことがおかしかったんだ。 もっと前に、罰を受けておくべきだった。 沈んだまま言葉を発しない俺に対し、成瀬が優しく声をかける。 「なんか、俺は嬉しかったんだけどな。 誰にアプローチしても、上手く行っても、心が動いてなかったお前が、 あんなに嬉しそうに、本気だって言ってくれて。」 「あーぁ。上手くいかないもんだな。」 しみじみと、友人のありがたみを感じる。 「お前は幸せになれよ。」 相手がいねーよ、と苦笑しながらポンポンと肩を叩く成瀬に慰められながら、夜は更けていった。
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