8.仕返し

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ガチャリとドアを開けた秋葉は、 二人の男を見て、あっとびっくりした顔になった。 「晴ちゃん、ごめん、私約束があるから今日は・・・」 そう言って男を帰そうとする秋葉だったが、 その男は、俺をちらっと見て、 「こないだ言ってたDVD、一緒に見ようと思って」 と譲らない。 結果、部屋の前で粘る訳にもいかず、 3人で秋葉の部屋でテーブルを囲むという、なかなか無い状況になった。 仕方ないというように、秋葉が紹介する。 「松原さん、施設からずっと一緒で、幼馴染の中島晴人くん。」 「晴ちゃん、会社の先輩の、松原さん」 お互い目線はそらさず、ペコリと軽く頭を下げる。 こいつが例のゲーム男・・・ まさか、顔を合わせることになるとは。 自分のことは高く高く棚にあげ、男を観察する。 スーツ姿でもガタイの良さが分かる体格、 顔つきは優しく、幼くも見えるが、 今こちらを見る目は鋭く光っている。 「彼氏?」 どちらに問いかけたか分からないが、晴人が投げかける。 「「多分・・・」」 「多分!?」 二人の声が重なり、晴人が声を荒げる。 「なんだそれ。秋葉、お前そういうタイプだったっけ。 今まで彼氏はいても、中途半端な関係は・・・」 あ、多分セフレか何かだと勘違いしてるな。 でも、勘違いでもないか。 ちょっと落ち込みそうになっていると、晴人がこちらをくるりと向く。 「松原さん、でしたっけ。 結構モテそうですけど、別に、秋葉じゃなくても良くないですか」 それはこっちのセリフだ。 「いえ、もうずっと俺の方がアプローチしっぱなしで。」 にっこりと笑って、お互いに牽制し合う。 「秋葉、お前・・・」 「晴ちゃん。」 凛と声が響く。 「ごめん。」 その言葉を聞き、くしゃ、と、顔を辛そうに歪めた晴人は、 わかったよ、と、乱暴に立ち上がった。 最後に俺をちらりと見て、「秋葉が幸せならそれでいい」と最後の牽制も忘れずに。 そして、バタン、と大きな音を立てて部屋を出ていった。
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