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「秀吉様はもういないんだ。新しい世を築こうとは思わないか、なぁ三成」
それは諭すように穏やかな口調で、だが、石田の背後にはどす黒い怒りのオーラが見えるようだ。
「家康、秀吉様を裏切るというのか」
「ワシは、死んだ者に囚われるべきではないと思うだけだ」
バチバチと音がするかと思う程、睨み合う石田と徳川。
俺は駆け付けた小十郎に手を借りその場を離れるしかなかった。
無様な退却。
それでも、命があるだけ儲けものだと思うべきか。
徳川には借りが出来た形になったが、どうすべきか。
凪は、無事だろうか。
あの石田の憎悪がもし凪に向いたら……考えたくもねぇ。
城に戻り、傷の手当に国の防衛にと追われあっという間に時間が過ぎていった。
今が夜なのか昼なのかもよくわからねぇ。傷の熱で朦朧としているせいかもしれねぇ。
「政宗様、凪が帰って来ました」
そこに小十郎から朗報が入った。
「Honeyは無事か」
「はい、しかし……政宗様っ」
慌てる小十郎の声。
凪が無事で良かった。
ほっとしたせいか、急に視界がぼやけた。
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