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「政宗殿を失うのは惜しいと思っただけだ。ワシが望む世には必要な男だ」
そう言い切った家康に、迷いや偽りはないように思う。
「家康が望む世とは?」
私の問ににやりと表情を緩める家康。
「俺は絆を持ってして日の本を一つにしたいのだ」
言い切った家康は清々しいまでに真っ直ぐにこちらを見ていた。
「絆、とはまた随分と抽象的なものを持ち出したな」
小十郎の目がすっと細められる。
強面な顔が更に険しくなるが、家康は怯むことなく堂々と見据える。
「第六天魔王と呼ばれ恐れられた信長殿は倒され、圧倒的な武を誇った秀吉殿も敗れた。戦国乱世を治めるのは力ではないと思ったのだ。ワシは人と人を繋ぐ絆の力、それが乱世を終わらせると信じてる」
家康の言葉は、政宗と私が目指す未来と同じことを言っているように聞こえた。
賛同し、同志として手を取り合うべきかもしれない。
でもどうしてか、心がザワザワする。
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