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「政宗」
そっと顔に掛かる髪の毛を避ける。
もう政宗が傷付くところを見るのは嫌だ。
苦しむ姿を見るのは嫌だ。
ましてや、命を落としていたかもしれないだなんて……。
石田三成。
主として慕っていた豊臣秀吉の仇として、政宗の命を狙った。
それはこの世界の理からいけば、至極真っ当な理由だ。
そしてもし政宗が討たれたら、私は石田三成を地獄の果てまで追うだろう。
天斗を失った時にそうしたように。
でも、もうそれじゃあ駄目だ。
討って討たれてじゃ、永遠に負の連鎖が終わらない。
「止まるかな……いや、止めよう、止めるしかない」
思わず呟いた言葉は断固たる決意だ。
争いを止めることが出来るのなら、止めるべきだ。無駄な血を流す必要なんてない。それが愛する人なら尚更だ。
熱も下がりすやすやと眠りつく政宗の表情を見てから私も目を閉じた。
ここ数日の疲労に私は畳の上で泥のように眠った。
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