26人が本棚に入れています
本棚に追加
甲斐
ぼんやりと空を見上げるけど、今日はどんよりとした曇り空。
「はぁ」
こんな日はただでさえ憂鬱な気分になっちゃう。
思わず零れた溜め息。
ユウちゃんは大丈夫だろうか。政宗さんと無事に会えただろうか。
さーちゃんもユウちゃんに急を伝えてから、またすぐどこかに行ったっきり会えてない。
ユッキーに聞けば、仕事でいつ戻ってくるかはわからないって。
いつもなら長く留守にする時は一言声を掛けてくれるのに。それだけ、急ぎの仕事だったのかな。
さーちゃんも無事に帰って来てくれればいいなぁ。
曇り空を見ながらそんなことを考えていたら、バタバタとした足音が聞こえてきた。
「夏樹ちゃん!!」
廊下の角を曲がって現れたのは、酷く慌てた様子の志絆さんだった。
「ど、どうしたんですか!?志絆さん」
志絆さんがこんなに慌てるなんて、本当にどうしたんだろう。
「信玄さんが、倒れた」
一呼吸を置いて、紡がれた言葉。
「……え?」
信玄さんが倒れた?
「うそ」
今朝、挨拶した時は体調は良いって言ってたよ。顔色だって悪くなかった、なのに、なんで?
最初のコメントを投稿しよう!