Cloudy mind

3/15
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「信玄さんっ!」 志絆さんと一緒に駆け込んだ部屋には、信玄さんの側に座るユッキーがいた。 ユッキーは眠る信玄さんの傍らに寄り添い、今にも泣き出しそうな顔をしている。 「ユッキー」 声を掛けるのも躊躇いたくなるユッキーの姿に、信玄さんの容態が窺える。 「幸村くん、今、医者が来るから」 志絆さんがそっとユッキーの肩に手を乗せる。 だけど、ユッキーの耳には届いてないみたい。 何も言えない沈黙が続いたけど、そこにお医者さんが来て私達は一度部屋を出た。 「志絆さん、ユッキーは?」 少し目を離した間に、ユッキーの姿が消えていた。 「幸村くん?あれ、どこに行ったんだろ」 どうやら志絆さんもユッキーが消えたことに気付かなかったみたい。冷静そうに見えるけど、やっぱり志絆さんも動揺してるのかな。 それはそうだよね、倒れたのは他でもない甲斐の大黒柱の信玄さんなんだから。 とりわけユッキーは信玄さんのことを尊敬している。 ううん、それだけじゃない。 自身が歩むべき道の指針としている。 だからこそ、他の誰よりショックを受けてしまったのかもしれない。 こんな時にさーちゃんがいないなんて。 昼間だというのに、厚い雲のせいで随分暗く感じる。 せめて、日の光が見えれば気持ちも少しは明るくなるのに。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!