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「あ、ごめん、話し中だったよね」
申し訳なさそうに顔を覗かせたのは凪だ。
話の内容を聞かれてしまったか。
思わず、鷹斗の方を向けば目が合ってなんともいえない気まずさに陥る。
「別に大丈夫だぜぇ、凪。俺ぁまた仕事で留守にするが、寂しくて泣くなよぉ?」
「あぁ気をつけて、行ってらっしゃい」
鷹斗の本気なのか冗談なのかわからねぇ台詞を右から左に流して、凪は笑顔で見送る。それは普段と変わらない景色だ。
鷹斗が部屋を去って、凪と二人。
不安げに揺れる瞳が俺を見つめる。
「Honey」
こんな顔をさせたい訳じゃない。だが、凪を巻き込みたくないだけなんだ。
「時がきたら、ちゃんと話す。だからもう少し待ってくれないか」
「……うん、わかった」
いくら夫婦間とはいえ、何もかも共有出来るわけじゃない。
それに政宗は一国のトップに立つ人間なんだ、機密事項があって当然なのに。
今までがオープン過ぎただけ、これが普通。と言い聞かせても、なんだかモヤモヤする。
鷹斗が関わってるんだから、やっぱり国のことなんだろうけど。
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