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ふたりの想いは、ねじりあう
灰色の空が涙を流している朔月の夜。
夜道にひとりの女のシルエットが浮かび上がった。
「……こんなもの、いらなかったのに」
女は夜道の端に、光り輝く何かを放り捨てた。
その女はしばらくの間、捨てたそれをみて迷っているようだった。
「……私が欲しかったのはこんなものじゃない」
「私が欲しかったのは……」
欲しかったのは、何だ?
自分が彼に望んでいたことは、一体なんなんだ?
終わることのない疑問が女の脳内を占拠する。
しかしふるふると頭を振り、そのような疑問を振り払った。
そして、この場から立ち去ろうとし、しかし再び立ち止まってそれをチラリと見て……こんなことが幾度か続いた。
そしてしばらくすると、女はおもむろに駆け出した。
「……友達から始めたかった」
そんな一言を残して。
それを見ていた男がひとり。
男はそれを拾い上げると、
「……、」
何かをポソリ呟き、ため息をひとつ零すと、それを自分のポケットにしまいこみ、男もこの場を立ち去った。
まずはきちんと友達から始めよう。
互いに知らないことが多すぎたのだ。
それでまだ彼女のことが好きだったら、もう一度彼女に告白しよう。
そう、心に決めて。
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