停電 180823

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暗。 美波が呟いた。絶頂から帰ったか。 電気消したの? いや。消してない。 何? 停電? そうかもしれない。今日は台風だ。だから会社が五時前に終了になった。僕は上司として、美波に言った。送るよ、と。こんなふうに大っぴらに美波を誘えたのは初めてだった。美波は返事をしなかったが、目が色づいたのがわかった。顔には出さない。でも、目の底が妖艶に光るのだ。魔力をたたえて。 電気つかないの? さっきからやっている。電気はつかない。僕は携帯のライトをつけた。 窓は開かないの? この時間なら外はまだ明るい筈だ。でも窓は開かない。窓が無いのだ。 もしかして、ドアも開かない? ドア? 玄関に行ってみた。いつも驚くような大きな音を発する自動支払機が死んでいる。その横のドア。開けてみる。開かない。ドアが開かない。押しても、引いても。 ドア開かない。 ベッドの上でシーツにくるまっている美波に言った。 うーん。 美波はちょっと困ったような声を出してみせる。 ふふ。 そして笑う。 ね。ゆっくりしよ。ちょうどいいじゃん。 魔力。魔力だ。 僕は美波の待つシートの中に潜り込んだ。
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