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序章
「何人にも恩恵を施す者は他人より愛されるよりも多く己を愛す」
これは万学の祖、アリストテレスの名言らしい。では何人にも恩恵を施さず悪事ばかり働いている俺は自分よりも他人を愛しているのだろうか。まぁ、今となってはどうでもいい事だ。
寒い。そりゃあそうか。12月の福島に半袖半ズボンの姿でいるのだから寒いのも当然だ。
眠気がしてきた。確か低体温症で死ぬ直前って眠たいんだっけ。寝ちゃダメだって分かってるのに瞼を動かせない。否、瞼だけじゃない。体が全く動かない、全身の筋肉が固まっているみたいだ。
俺、もう死ぬのかな。せめて死ぬ場所は綺麗な所にしようって決めたのに。その為に逃げて、今まで生きてきたのに。こんな汚い路地で死ぬなんて。
惨めだ。泣きたい。でも、もう涙は枯れてしまった。
もういいや。どうせ俺の人生なんてこんなもんだ。このまま寝っ転がって安楽死といこうか。
「いい顔だ」
突然、優しい声と共に男が俺の顔を覗き込んだ。
「私の元で戦わないか?」
戦う? つまり死ぬかもしれないって事か? 面白そうだ。どうせここにいても死ぬだけ。どのみち死んでしまうのなら、ここより戦場の方が何倍もマシだ。
「……あぁ」
俺がそう返事をすると、男は俺に手を伸ばした。
「いい返事だ。さぁ、おいで」
そうして俺は「ガードマン」としてこの男の元で戦うことになった。
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