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それはきっと、些細な事なんだろう。
貴方という存在を目にしたり、出逢ったり、理由は些細な事なんだろう。いつでも会えると言えば会えるのだけれど、会えないと言えばそれも間違いではない。
貴方と私の住む世界は全くの別物で、隣で歩くのは不可能に近い。貴方に会いに行くのもままならない。
貴方がどこにいるかも分からないし、どんな人なのかも分からない。
貴方と同じゲームをして、同じクリア画面を見つめて、同じようなスタイルを取り入れて、同じようなスキルを身に付けて、周りを見れる力も身に付けて、周りの人を助ける優しさも少し持って、色々貴方の真似をしてみた。でもそれはただの真似事で誰も見てないし、貴方も気に掛けない。
何か貴方を振り向かせる方法は無いのだろうか?そんな事を考えたら、きりが無いし、苦しくなってしまう。
でもちょっと勇気を出して、メッセージを送ろうと何度も何度も文を考えては消した。皆が普通にメッセージを送る中、私は少しの勇気も出なくて結局何も送れなかった。
ただ一人の私に貴方が気付いてくれる訳でも無いし、返事をくれるわけでも無い、と思う。私がチキンなだけだけど。
私は多分、ずっとそんなこんなで、ちぐはぐな気持ちを持って毎日を生きるんだと思う。メッセージすら送れない私が貴方に出逢って、声を掛ける勇気なんて無いし、そもそもどんな人かも分からない人に声を掛けれるはずがない。
五百万歩、一億歩譲って、貴方と出逢い、声を掛けたとしても貴方は怪訝な顔をして、ぎこちない笑みを浮かべるでしょう?ありがとうって引きつった笑みで言ってそそくさと去って行くでしょう?
そんなのは勝手な私の妄想なのだけれど、なきにしもあらず、っていうでしょう?まぁ、遠くに住む貴方に会える事はないのだけどれど。
出逢いは些細な事だという。運命の赤い糸とも言う。そんなメルヘンな事が起こるのは、たった一部の人だけだと思う。何の努力もしない私にそんな奇跡が起きる訳も無くて、見知らぬ誰か、いや、貴方の周りの人に羨ましさを感じた。
私も貴方と友達になってみたいとか思ったりして。
そんな事は叶うはずもないから、今日も私はイヤホンをして貴方の出す動画で貴方の声を聞きに行き、会いに行くのだった。
貴方のたった一人になれない事を再認識したあの日、私は貴方への想いを捨て、貴方を応援する大勢の一人になる。今の私はそれで十分だ。
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