出来そこないの世界でも 2

2/13
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「荷物を取りに構内に入れるからだろ」  槇は悪びれなく、にこにこと笑っている。電車が大好きな槇は、いつだって駅に行きたいのだ。  断る理由もないから、作業が終わったら槇と行くことにした。 「手紙、来たのか」 「うん、なんだか相変わらず未知の世界の話が書いてあった。秋のバレエ発表会に向けてみんなで衣装を縫っていますとか、同級生の誕生会にお呼ばれしました、とか」  たぶんテーブルには見たこともないご馳走が並んでいたんだろう。少なくとも鯖の缶詰めではなく。 「それって、この世の話だよな」 「たぶんな」  富みは平等に分けられたはずだけれど、物は大きな町に集約してから各地へ分配されるから、どうしても、そちらには良いものが流通するらしい。  伸びた茅をザクザクと切る。草いきれに刺激されてクシャミが出そうだから、タオルで鼻と口のあたりをおおう。     
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!