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前に送られてきた写真は、バレエの衣装姿で椅子に腰かけているものだった。緑っぽくて青い……なんていうの? 短めの裾が真横に広がる典型的なバレエの衣装。髪をきれいに結い上げて、きっちりお化粧して、髪飾りも衣装もなんだかキラキラしすぎて、目がくらんだ。あまり動かないという右足には装具がはめてあった。よくみると確かに左にくらべて、いくぶん細かった。
「うちの女子どもと同じ生き物とは、思えない」
女子は河原のゴミを拾うのが仕事のはずなのに、ジャージのすそをまくって川の浅瀬で嬌声をあげていた。
「なにしてんだろ」
「うなぎを捕る罠を仕掛けるんだと」
「うなぎー!?」
ぼくの声を聞きつけたのか、女子が大声で返事をしてきた。
「夏休み最終日には、捕ったウナギでバーベキューだよ!」
「材料は持ち寄りだからね」
「拓海はお肉のクーポン、提供してよ」
矢継ぎ早の要求に、唖然とする。そんなぼくの肩に槇が手を乗せた。
「えんじゅさんの写真を女子に見られて以来、拓海は彼女ら全員を敵に回した」
「り、理不尽な」
えんじゅさんの写真は思わぬところで波紋を広げていたらしい。ちなみに、男子からは、さんざんやっかまれたのは言うまでもない。
こんなふうに、文通していていいことは、しょうじきない。ひとつも。
はあ、とため息をつく横で槇は草を刈りながら言う。
「すごい生命力だよな。ぼくたちが刈らなかったら河原といわず、ぜんぶあっという間に植物に埋もれる」
人は減るばかりで、もう棄てられた場所もたくさんあるって聞いている。ここは、最後の時まで、この姿を留めていられるんだろうか。
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