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そんな想いは振り払う。今日は、よく使う船着き場と、いちばん近い橋の間を刈れば終わりだ。
「昔はさ、茅とか葦で屋根を葺いたり舟を作ったりしたんだそうだ」
さすが、博識の槇はなんでも知っている。こんな細い頼りないもので、ねえ。
「終わったら、冷やし飴と西瓜の差し入れがあるってさ」
「甘いものにつられて、朝から仕事するなんて、ぼくらはほんとスナオでいい子たちだよな」
対岸の白鷺のつがいが、ぼくらの騒ぎにあきれたように飛んでいった。
草刈りに歩いて来た槇をリヤカーの荷台に乗せて駅へ向かった。
「らくちん、らくちん」
つぎはぎだらけのアスファルトに荷台が弾んで、槇が小さな子どもみたいに歓声をあげた。人ひとり乗せているのに、さほど苦には感じない。槇の体重はきっとぼくより、よほど軽い。
その軽さに少しだけ不安を感じながら、まばらな住宅街を通り越してロータリーになっている駅前までやってきた。電気バスが発車を待つお客さんを乗せて二台、待機している。
早朝のうちからロータリーの広場にある配給所には、クーポンと品物を交換する人が十人ばかり列を作っていた。配給所の隣では、物々交換のマーケットが開かれている。野菜や手作りの日用品を持ち寄って交換するんだ。
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