ブルー・バード

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 白のストッキング、よかった。破れていない。それから、ペパーミントグリーンの衣装(チュチュ)。肩紐を持って目の前に高くかざす。ふわりと横に広がる裾はチュールを何枚も重ねて作られている。  胸の位置に植物の弦を思わせる、曲線的に縫いつけられたパールとスパンコールがきらきらと光っている。やっぱり、すてき。  虫食いもないみたい。もっとも、細かいものはずいぶん見えにくくなったから、気にしないの。  着替えてみるとチュチュはすんなり体になじんだ。髪はどうしようかしら。おだんご……シニヨン、結えるかしら。長さは申し分ないけれど、艶を失ってまとめづらくなっている。でもヘアクリームが残っていたはず。髪飾りもつけたいから、がんばって結ってみましょう。  鏡に映る私は、おばあさんだけれど、平気。目をつぶれば、ほら。発表会の出待ちの順番に胸をときめかせている小さなバレリーナに戻れる。  ほんとのことを言えば、そのときには主役ではなかったけれど。それでも、年に一度の発表会で衣装を身につけてきれいにお化粧をして。ステージ立つのは、ほんの端役でも心がわきたった。  それに、あなたの踊りを見られることが、誰よりも拍手を浴びるあなたを見ることが、とてもとても楽しみだったの。     
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