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『終わる日』が公式に発表されたとき、わたしとあなたは結婚したばかりで。幼いときからささやかれていた噂が真実だと知らされて、子どもは諦めたのよね。
悲しい想いはさせたくないって、ふたりで決めたの。
それでも、レッスンにやってくる子どもたちのお世話をするとき、柔らかな髪を結ってあげたり、上手にできたって抱きしめたりするとき、愛おしさでいっぱいになった。
たとえ、終わる日が分かっていても……その日まで子どもといられないかも知れないけれど、それでも……。下の世代には、まだ子どもが生まれていたから。
あの子、もういくつになったかしら。『さいごの世代』たちは三十くらい? ご両親はお元気かしら。お母さまもうちの生徒さんだったのよね。
そんな思い出話をあなたの枕元で続ける。先に逝ってしまったあなたに。
きゅうに空が明るくなる。
外のざわめきが悲鳴に変わる。建物全体が、ずんっと沈む。
さっきから続いていた振動が大きくなる。
空は、明るく……赤く染まっていく。
ああ、あなた。この時一緒にいられたらと。堅くなった手を握る。思わずあなたをかばう。
背中に衝撃、ベッドごと体が折れた。
終わりの日、空から星が降ってくる。それは七十八年前から分かっていたこと。
私はあなたと、青い鳥を踊る……。
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