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ブルー・バード
カーテンは、開けたままにしておきましょう。
今夜は満月ですもの。それに星明かりがとてもきれいよ。外はまるで黄昏どきのよう。
カーテンもだいぶ、くたびれてしまったわね。布がすっかり薄くなって、細く裂けているし、カーテンレールが何カ所も壊れている。
直そうにもレッスン場の天井が高すぎて、私なんかが梯子をかけても手が届かないわ。
鏡と床は毎日お手入れしてきたけれど、それも今日でおしまい。私はモップを片付けて、レッスン場に置いたベッドに眠っている、あなたの額にキスをする。
開けた窓から、かすかに人のざわめきが聞こえる。広場に集まる人が多いのかしら。二階の窓から外を見ると、噴水のまわりやベンチ
にやってくる人たちがいる。
そうね、一人きりだとさびしいものね。なら私はここにいるわ。
さてと、準備をしなきゃ。この日のために用意していたものがあるから。
私は隣の部屋へ床を踏み抜かないように慎重に足を進める。クローゼットへ行くと、奥にしまっておいた紙の箱を取り出す。高さのない長方形の大きなものだけど、軽いから私でも運べる。
どうかしら、まだ着られるかしら。
蓋を開けて中を確かめる。
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