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出来そこないの世界でも 2
五時から河川掃除。それが今日のぼくらへの割り当てだった。折りたたみ式のアルミ製のリヤカーを自転車につけるのに手間取って、全力でペダルをこいで河原へ着くと、もうみんな作業していた。
「おはよう、拓海」
ひょろっと背の高い槇が、腰を伸ばして声をかけてきた。
「おはよう。久しぶりだけど、夏やせか」
元から色白で痩せている槇だけど、さらに体重を減らしたようで以前よりズボンのウエストがあまって見えた。
「夏バテしてさ。昨日、拓海のお母さんから赤紫蘇のジュースもらった。ありがとう。炭酸で割るとすごい美味いのな」
早朝だっていうのに、真夏の陽射しはすでに強くなり始めている。夜も寝苦しいから夏バテになってとうぜんかも知れないけれど。
ぼくも首にタオルを巻いて、軍手をはめると鎌を右手に河川の土手の草を槇の隣で刈り始めた。とたんに長靴が朝露に濡れる。
「リヤカー付きって、帰りにどこかよるのか」
「駅に荷物を取りに行くよう、母さんに頼まれた」
駅、と聞いて槇の瞳がキランと光ったような気がした。
「一緒に行ってもいいかな。荷物運ぶの手伝うよ」
そわそわとした様子で草を刈る。槇の魂胆は分かっている。
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