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新しき世界 ーさよならストロベリーー 1
はやく死にたい。
『早まってはいけません。確かに地球の最後の日は決まりましたが、まだ六十年の猶予があります』
死にたい、きみのいない人生なんて、意味がない。
『死を選ぶことは賢明ではありません。世界はこれから変わっていくのです。かつて実現しえなかった平等な社会です』
全財産なげうってでも助けたかった。わたしの無能さをわたしは恨む。
『貨幣を廃止し、すべてのものを地球上に住む全員で平等に分けましょう。わたしたちはすでに理解したはずです。物質的な豊かさが幸福につながるわけではないということを』
なにもいらない。きみさえいたなら……。
強い照明を浴びながら何台ものカメラのまえで弁舌をふるう。全世界の首脳陣たちとの話し合いの結果を、しかも出席していたのは前任者という締まらない結果を。
まったく知らない場所で知らないうちに決められたことを、あたかも自分の思いであるがごとく、ただ話す。
言葉は空虚だ。情報を伝えるのなら肉声……肉体さえ必要がないだろう。
「ありがとうございましたー!」
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