常識をどこに忘れましたか

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*** 今日は、いよいよ鏑木先生に挨拶に行く日だ。 天沢さんと二人で大きな自社ビルを出ると、眩いほどの真夏の太陽が照りつけていた。 東京は私の地元である岐阜よりも気温が低い日が多いが、アスファルトからの熱が体力をどんどん奪っていく。 それにもようやく慣れてきたけど、平気かと聞かれたら、やはり夏はあまり得意ではない。 ふと振り返り、大きなビルを見上げた。 『暁光(ぎょうこう)出版』 それが、私が昔から絶対に働きたいと憧れていた大手出版社であり、現在働いているところでもある。 小さな頃に読んだ『言の葉』という詩。 誰の作品だったか忘れてしまったけど、言葉の力は人々に優しくて温かい灯りをともすのだという。 その言葉こそ力があると思う。
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