常識をどこに忘れましたか

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思わず、興奮から鼻が膨らみそうになったけど、先生と一緒に食べるなんて、編集の立場の人間ができることではないか、と思い直した。 これから、私はファンの一人として会うわけではないのだから、公私混同などありえない。 合言葉は『一流の編集者』だ。全てはそこに繋がる。 だてに長年、本当の自分を隠してきたわけではないのだ。今こそ、その成果を発揮する時だ。 「萌々子ちゃんは、いつから鏑木先生のファンなの?」 「デビュー作からです! 突然、彗星のように現れた高校生作家。若くして書いたとは思えぬ、深みのある表現の数々。大御所の方々からの高評価。天才です! 生まれながらにしての作家です!」 「……本当に好きなんだね」 笑いを含んだ天沢さんの声に、血の気が引いていき、顔だけが熱くなっていった。 一瞬前に、自分を隠してきた成果を見せると誓ったはず!
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