常識をどこに忘れましたか

19/42
前へ
/504ページ
次へ
* 「……先生って、一人暮らしなんですよね?」 ドーナツがたくさん入った箱を手に、天沢さんに連れられて着いたのは、閑静な住宅地に堂々と建つ立派な一軒家だった。 いや、まずドーナツを買う時点で一人暮らしを疑った。 だって、天沢さんが買ったのは二十個だ。 普通自分たちの分は買わないから、これは純粋に差し入れ分なのだけど、ご家族でも一緒なのかと思っていたら一人暮らしだと言うし。 マンションかと勝手に想像していたら、立派な一軒家だし。 そりゃ、有名な売れっ子作家なのだから、一軒家でも不思議ではないのだけど。 「一人暮らしだよ」 「ドーナツは」 「大好きなんだよね」 「はぁ」 好きで済まされる量だろうか。
/504ページ

最初のコメントを投稿しよう!

773人が本棚に入れています
本棚に追加