常識をどこに忘れましたか

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いや、待って。 好きだから、何日もかけて、大事に食べるのかもしれない。 そうだよ。どうして、そんな簡単なことが浮かばなかったんだろう。 一人納得していると、天沢さんがインターフォンを押さずに鍵を開けているところだった。 「え?」 「どうせ、インターフォン鳴らしても、先生は気付かないよ」 「そうなんですか……不用心ですね」 「この方が、こっちも安心なんだよ」 どうにも会話が成り立っていない気がするけど、どうしてだろう。 私の中の鏑木郁先生のイメージが、だんだんあやふやになっていく。 謎の先生は、私が思っている以上に、謎の人物なのだろうか。 そうこうしているうちに、天沢さんは玄関を開けて、当たり前のようにスリッパを出してくれていた。
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