言葉を編む ひつじ

常識をどこに忘れましたか

もうここはリビングという概念を取り払った方がいいだろう。

常識を捨てるべきかもしれない。

いや、でも、この部屋だけかもしれないし。

きっと先生は素敵な人に違いない。

儚くて、綺麗で、落ち着いた大人の女性……がジャングルに住むだろうか。

一人取り残された私は、仕方なく周囲を見回してみた。

あちらこちらにプランターが置いてあって、間違えると手当たり次第なぎ倒してしまいそうだ。

視線を上げれば、蔦植物が思い思いに支柱を伝って天井まで伸びているし、ところどころ花も咲いている。

辛うじて、ドーナツを置いたテーブルは目の前にあって分かるけど、ソファーは存在するのだろうか。

テレビはないのかな。

待って、キッチンはどっちの方向だろう。

その時、ようやく離れたところから二人分の話し声が聞こえてきた。