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落ち着いて、萌々子。
現状を把握するんだ。
とりあえず目の前には、ニコニコ笑いながら首を傾げる可愛い人がいる。
明るい栗色の髪は猫っ毛なのか、柔らかそうでふわふわだ。
目にかかるほどの前髪も、耳にかかる髪も軽やかで、少し天然パーマなのかもしれない。
目が大きくて、薄い唇も形が良くて、全体的に華奢で、顔も体型もバランスよく整っている姿はお人形さんみたい。
誰だろう、この少女は。
「萌々子ちゃん」
「は、はいっ、すみません、ちょっと頭が真っ白で。初めまして。宝生萌々子と申します。あの、鏑木先生はどちらに……」
天沢さんに呼ばれて、慌てて名刺を出そうとして、滑って名刺入れを落としてしまった。
「僕が郁。鏑木郁だよ」
「……え?」
私はその言葉に、床に手を伸ばしたままの体勢で固まってしまった。
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