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いつの間にか、両手に持っていたドーナツが消えている。
箱には……いや、数えるのはやめておこう。
細い腕の中にあるクッションを抱き締めて、そこに顔を半分埋めている様子は、正直可愛すぎて悶絶しそうだ。
私の鏑木郁のイメージは、あながち間違いでもなかったのかもしれない。
変なところを除けば、だけど。
「萌々子ちゃんの鳴き声、可愛いね」
貴方もですか……!?
隣から聞こえてきた声に突っ込まなかったのは、正解なのか失敗なのか分からない。
「ほら、陵介だって」
「郁みたいに変人じゃない」
どっちもどっちのような気がします。と、声を大にして言うには、まだ二人との距離が掴めていない。
心の中での突っ込みが多くても、それを声に出して言う勇気というのは、私にはあまりない。
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