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暮らし始めてから、約一か月。
郁は本当に衣食住に無頓着であるということが分かった。
その上、気付くとその辺りに倒れていて、血の気が引いたことが何度もあった。
「先生!?」
まさに、今も階段の下で倒れているところを見つけて、私の方も倒れそうになっている。
急いで駆け寄って、細い肩に触れる。
シンプルな白いカットソーは、郁が好んで着ている物だ。
理由は簡単。白はどの色とも喧嘩しないから。光を邪魔しないから。だそうだ。
郁らしい。そう思うようになるくらいに、このひと月は濃厚だった。
「先生、大丈夫ですか? 分かりますか?」
「寝てるの」
「寝ている人が、『寝てる』とは返事をしません!」
「モモー」
「何ですか?」
「膝枕して?」
郁はフローリングの床の上でころんと仰向けになり、にこりと微笑みながら、理解不能なことを言った。
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