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とにかく郁は気分屋というか、マイペースというか。
それは日常生活だけでなく、執筆に関してもそうであった。
音に関しては、聞こえない私には何とも言えない。
光の音が、郁の創作に大きく影響していることは確かなようだ。
でも、その音を一緒に聞くことはできないし、音をさせて、郁の創作意欲を刺激することも当然できない。
単なる『物音』『綺麗な音色』とは違うのだから。
「モモが膝枕してくれたら、ちゃんと書くよ」
「先生」
「郁だよ」
「……郁、膝枕は」
「ダメ?」
郁が首を傾げると、目にかかっていた前髪が流れて、緩やかにカーブを描いている眉が覗く。
そこが、ほんの少し下がっていることに気付いてしまった。
できれば、気付きたくなかった。だって、だって……
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