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入学式のあの日。
大きくて身体に合わないブレザーを着た小柄な郁が、三階の窓を突然開けて飛び出そうとして、騒然とした出来事が昨日のことのように思い浮かぶ。
窓の近くに座っていた陵介が咄嗟に郁の身体を捕まえて、事なきを得たのだ。
その時、妙に懐かれてしまったのが運の尽き。
クラスでもいつの間にか、郁のお守りは陵介の仕事になってしまっていた。
在学中に作家デビューした郁は、瞬く間に有名になり、大学には進学せずに作家業に専念した。
陵介は某有名大学文学部に進学し、それで縁は切れるものだと思っていた。
郁が変人であることは間違いないのだが、バカに見えてバカではない。
連絡先を変えても、どこから入手するのかすぐに連絡を寄こしてくる。
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