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そうして、仕方なく顔を出すと、倒れていたり、遭難していたりするのだから、もうこいつは自分がいなければ死ぬんじゃないかとさえ思ってしまったのだ。
実際、あの日、陵介がいなれば、郁は飛び降りて死んでしまっていたかもしれないのだから。
陵介が就職をする時になって、郁は目をキラキラさせて言った。
『陵介、編集者になって。僕の』
バカだろ。
そう言って、鼻で笑ってみたものの、内心冷や汗ものだった。
何故なら、その言葉に魅力を感じてしまったのだから。
特にやりたい仕事があるわけではなかった。
なんとなく大学に行って、なんとなく興味ある講義と必要な単位を修めていっただけだ。
就職だって、適当な会社に入社して、平凡なサラリーマンになるのだろうと思っていた。
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