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それなのに、この破天荒な郁の編集者という、かなり大変になることが目に見える仕事に胸がときめいてしまったのだ。
そうして、幸か不幸か、暁光出版という大手に就職が決まり、腕のいい編集者の下で修業した後、この変人作家の担当に収まったのである。
そんな長い付き合いの二人だが、陵介は女性に固執した郁を初めて見た。
光や音、植物などに強い興味を示すが、郁が人間に興味を持つことなど、思い起こしても数少ない。
そう振り返って、陵介はこめかみをぐりぐりと押す。
「萌々子ちゃんの前に固執されたのって……もしかして、俺か」
残念無念。
鏑木郁に目を付けられた者は、その腕の中から抜け出す術はないのかもしれない。
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