がらくたと屑

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盾兵は、自分のことを不良だとかなんだとかいって卑下することはなかった。 わざわざそんな言い方をしたのはきっと、その店長にそう言われたから。 俺は盾兵の無言で、それが肯定だと感じた。 なんだか、無性に悲しくなった。 「それなら俺のほうが屑だよ。ブラック企業で朝から晩まで仕事して、会社や上司に  黙って従って。ずっとイライラしてて生きてる意味なんかあんのかって考えて。」 「……黙れよ。」 「ガキのころは粋がってたのによ、働きだしたら反抗もなにもせずにさ。ほんと。」 盾兵の胸倉を掴む手に力が入らなくなってくる。 なにいってんだ、こんな朝っぱらから。 だがどんどん言葉がでてくる。 「俺のほうが人生捨てて――――」 「黙れよ!!!!」 普段大声を出さない盾兵の声は、俺の耳に、頭に響いた。 こいつ、こんな大声出せるんだなとぼんやり思うと 盾兵は俺の胸倉を握り返して、顔を近づけてきた。 「あんたがそんなこというなよ。……俺の、くだらない理由、馬鹿にしなかったの、  嬉しかったんだぜ。……あんた、屑じゃねえよ、ちゃんと、生きてるよ。」 くだらない理由――――桜のことか。 盾兵は悲しんでるのか怒っているのかわからない表情で俺をにらんでいた。 はじめ会ったときは表情が変らないやつだなとか思ってたが、 こいつは案外わかりやすい。 「……ならお前もそういうなよ。わかるだろ?」 俺もお前がそういうと悲しいように、お前も俺がそういうと悲しいんだな。 なんだ、俺たち似たもの同士じゃねえか。 盾兵は黙って俺を見ていた。 ……うん、そろそろ手を放してくれないかな。 目と鼻の先にこいつの顔があってなんか、緊張するんだが。 しかし近くでみると結構男前な顔してるんだなあとかなんだとか考えてたら こいつの顔がさらに近づいてきて―――――
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