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 地響きを思わせる轟音だった。  入口の障子が震えてガタガタと鳴る。 「おせんっ、お隣に行っといで」  おせんの母、お美代が甲走った声で喚いた。  おせんは慌てて外に飛び出した。母は優しいが、ことお隣のこととなると、その限りではない。「まったくとんでもないのが転がり込んできたもんだ」お美代はここのところ、そう零してはため息をつく。  ここは深川、小名木川近くにある裏長屋。  お隣の戸口の障子紙は破れるに任せて放置されていた。春は間近だが、まだ寒風吹きすさぶ一月の末。お天道様が高くなった時分とはいえ、これでは寒かろう。  おせんは障子に手を掛けた。轟音はその中から聞こえてくる。  障子を開くと、轟音の元がそこにいた。 「ついにはともにうまるぅべえきぃおなじはちすのれんじょうほうし」  長屋の狭い土間に巨大な人影があった。  身の丈七尺はないまでも、軽く六尺を超える大男だ。
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