補助員 180830

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補助員 180830

 静かな朝を迎えた。  雪が積もっているのだ、と私は思った。  こんなふうに毎朝同じバイオリズムで、同じ明度で、同じ室温で起こされているというのに。  人間の感覚は昨日と違う情報を感じ取る。  人間の耳は昨日と違う音を聴き取る。  昨日までしていた音が今朝はしないのだ。  静か。  沈黙。  実家を思い出す。  山形。  実家の朝。  しんしんと寒くて迎える朝。  風の音も、鳥のさえずりも聴こえない。  沈黙。  子供だった私は布団の中に頭まで潜り込んで、少しわくわくしている。  外はきっと雪だ。  雪が音を吸い込んでいるのだ。  風の音も、鳥の声も。聞こえない。  沈黙。  初雪だ。
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