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今日は平日だ。大学に行っているのかと思ったが、そういえば卒論は終わったとも言っていた。実家にでも帰っていたのだろうか。まるで俺の行動を見越したかのようで背筋が薄ら寒い。
「そういや、お前んちってどこなんだ?」
この近くだと聞いていた。確かに住宅がないわけではないが、多くはオフィスだ。
下田代は、間近に立つ高層ビルを指さす。
「オフィスビルだろ」
「最上階は違うんすよ」
そもそもビルの用途が違うはずだ。嘘に違いないと思ったが、いまだに得体の知れない彼のことだ。絶対にありえないとは断言できないのが何だか悔しい。
「息子さんを下さいっていう挨拶ならちょっと心の準備が……」
「昼休みに誰がそんなことしに行くか」
俺はパンを頬張る。
「お前、昼飯は?」
「昼食べないっす」
「食べろよ」
だからこいつはこんなに痩せているのかもしれない。まぁ鍛えてはいるようだしがりがりではないが、細身だ。
「ほれ」
俺は買っておいたパンがまだ入っているビニール袋を彼に渡す。
「古津さんの分なくなんないすか」
「多めに買っといた」
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